食品の化学

糖質

■デンプン
・デンプンは,α-グルコースが縮合重合して生成。分子はらせん状構造。

■アミロースとアミロペクチン
・デンプンは,枝分かれを持たない部分である「アミロース」と,枝分かれを多く含む「アミロペクチン」からなっている。
☆アミロペクチンは枝分かれが多いので,分子同士がからみ合い,粘り気がある。※もち米はうるち米(通常の米)よりも多くアミロペクチンを含んでる。
反応性;ヨウ素溶液を加えると,アミロースは青色,アミロペクチンは赤色(〜赤紫色)に呈色する。
デンプン全体では青紫色に呈色する。(ヨウ素デンプン反応)。
☆もち米はアミロペクチン100%、うるち米はアミロペクチン80%。

■セルロース
・セルロースは、β-グルコースが直鎖状の構造。

■デンプンの消化
・デンプンは,唾液中の酵素「アミラーゼ」によって加水分解され,「デキストリン」を経てマルトースに変化する。
さらに、マルトースは小腸で酵素マルターゼによって加水分解されてグルコースになり吸収される。

■多糖類
・セルロースはβ−グルコースが縮合重合したもの。草食動物はセルロースを分解する酵素を持っている。セルロースは酵素「セルラーゼ」により加水分解されて,二種類の「セロビオース」となり,さらに酵素「セロビアーゼ]により加水分解されてグルコースになる。

■マンナン
・マンナンはβ−マンノースが縮合重合したもの。こんにゃくの主成分。(こんにゃくは80%が水で,それ以外はマンナン)。
・ヒトはセルロースやマンナンの消化酵素を持っていないので,これらは食物繊維としてはたらき,整腸作用がある。
☆セルロースとマンナンは食物繊維となる。

■単糖類
・天然には炭素原子を5個含むペントースと,6個含むヘキソースが多く存在する。

■ペントース
・代表的なものは,リボースとデオキシボリボース。
☆ペントースは核酸以外では出題されない!

■ヘキソース
・代表的なものはグルコース,フルクトース,ガラクトース。

■グルコースの還元性
・グルコースの還元性は鎖状構造のアルデヒド基による。

■グルコースの水溶液
・グルコースの水溶液中では3種の異性体(α-グルコース,鎖状構造,β-グルコース)の平衡状態にある。

■単糖類とニ糖類
・単糖類や二糖類には甘味を示すものが多く存在する。
・スクロースは砂糖の主成分。
・マルトースは水あめの主成分。
・はちみつの甘味はグルコースとフルクトースで,非常に強い甘味を持つ。

■フルクトースの還元性
・フルクトースの還元性は鎖状構造の-CO-CHOHにある。

■代替甘味料
・ソルビトールやキシリトール,アスパルテームはカロリーを抑えた代替甘味料として広く用いられるようになってきている。

アミノ酸・タンパク質

■タンパク質とアミノ酸
・タンパク質を構成する単位をアミノ酸という。
・タンパク質を構成するアミノ酸は全部で約20種類存在する。

■α-アミノ酸
・タンパク質を構成するアミノ酸のほとんどは、カルボキシル基の次、つまり「α炭素」にアミノ基がついているので、α-アミノ酸である。
(カルボン酸において、カルボキシル基に直接結合した炭素原子を「α炭素」その次の炭素原子を「β炭素」、その次を「γ炭素」という。)

■グリシン
・最も簡単なα-アミノ酸は「グリシン」。
☆グリシンは不斉炭素原子が存在しないため、光学異性体が存在しない。

■側鎖
・アミノ酸の共通構造はアミノ基とカルボキシル基が1個ずつ存在し、共通構造以外の部分を「側鎖」という。

■アミノ酸の種類
・アスパラギン酸やグルタミン酸は側鎖にカルボキシル基をもっているので、全体として酸性を示す。このようなアミノ酸を「酸性アミノ酸」という。
・リシン酸は側鎖にアミノ基をもっているので、全体として塩基性を示す。このようなアミノ酸を「塩基性アミノ酸」という。
・フェニルアラニンやチロシンは側鎖にベンゼン環をもっている。このようなアミノ酸を「芳香族アミノ酸」という。
・バリンやロイシン、イソロイシンは側鎖に分岐アルキル基をもつ。このようなアミノ酸を「分岐アミノ酸」という。

■双性イオン
・アミノ基はイオン化すると正に、カルボキシル基はイオン化すると負に帯電する。正と負の両方を持つイオンを「双性イオン」という。

■アミノ酸の性質
・アミノ酸は双性イオンとなるので、水に溶けやすく、分子量の割には融点が高くなる。

■アミノ酸と縮合
・2分子のアミノ酸が縮合したものを「ジペプチド」といい結合を「ジペプチド結合」という。
・3分子のアミノ酸が縮合したものを「トリペプチド」、多数のアミノ酸が縮合したものを「ポリペプチド」という。

■タンパク質の変性
・タンパク質は複雑な立体構造をもっていて、熱、酸、アルカリ、アルコール、重金属イオンなどを加えると、立体構造が壊れて凝固する。これをタンパク質の「変性」という。

■タンパク質の検出
@窒素の検出
タンパク質に水酸化ナトリウムを加えて加熱するとアンモニアが発生する。

A硫黄の検出
タンパク質に水酸化ナトリウムを加えて加熱したあと、酢酸鉛(U)水溶液を加えると、硫化鉛(U)の黒色沈殿が生成する。

Bキサントプロテイン反応
タンパク質に濃硫酸を加えると黄色になり、さらにアンモニア水を加えると橙黄色になる。
☆これは、フェニルアラニンなど、ベンゼン環を含むアミノ酸のベンゼン環がニトロ化されるため。

Cビウレット反応
タンパク質に水酸化ナトリウム水溶液と硫酸銅(U)水溶液を加えると、赤紫色に呈色する。
☆これは、ペプチド結合が銅(U)イオンに配位して錯イオンを形成するため。トリペプチド以上では起こるが、ジペプチドとアミノ酸では起こらない。

Dニンヒドリン反応
タンパク質にニンヒドリン水溶液を加えると、赤紫色に呈色する。
☆これは、ジペプチドとアミノ酸でも起こる。

■タンパク質を含む食品
・細胞の中に最も多く存在する物質は水。その次に多く存在する物質はタンパク質。
・ヒトでは約10万種類ものタンパク質が存在する。
・タンパク質を含む食品として,動物性タンパク質では肉類,植物性タンパク質では大豆が代表的。
・肉類には約30%程度のタンパク質が含まれている。
☆タンパク質は約16%の窒素を含んでいる。

■タンパク質の変性
・タンパク質は水素結合などにより複雑な立体構造を形成し,加熱やアルコール,酸・アルカリ,重金属イオンなどによって,立体構造が破壊されて不可逆的な変化を起こす。これをタンパク質の「変性]という。
☆魚肉を酢漬けにすると,魚肉が酢によって変性し,色が白っぽく硬くなる。しかし細菌のタンパク質も変性するので細菌が酢によって死滅し,魚肉の腐敗を防ぐことができる。

■必須アミノ酸
・ヒトのタンパク質を構成するアミノ酸は約20種類存在する。そのうち8種類は体内で合成できないので食物から摂取する必要がある。これを「必須アミノ酸]という。
・必須アミノ酸はバリン,ロイシン,イソロイシン,トレオニン,メチオニン,リシン,フェニルアラニン,トリプトファン。(幼児期には,ヒスチジンも含まれ,必須アミノ酸は9種類となる。)
☆必須アミノ酸は8種類。

油脂

■油脂
・油脂は3分子の高級脂肪酸と1分子のグリセリンからなるエステル。

■飽和脂肪酸
・油脂を構成する高級脂肪酸で,炭素間がすべて単結合であるもの。
・飽和脂肪酸を含む油脂は動物性油脂が多く,融点が高いので常温では固体として存在する。(「脂肪」ともいう)。
☆例;ステアリン酸

■不飽和脂肪酸
・炭素間二重結合が存在するもの。
・不飽和脂肪酸を含む油脂は植物性脂肪が多く,融点が低いので常温では液体として存在する。(「脂肪油」ともいう)。
☆例;オレイン酸,リノール酸,リノレン酸。

■乾性油
・脂肪油のうち,炭素間二重結合を多く合む油脂。
☆固化しやすい性質をもつ。

■不乾性油
・脂肪油のうち,炭素間二重結合が比較的少ない油脂。
☆固化しにくい性質をもつ。

■半乾性油
・乾性油と不乾性油の中間の性質を持った油脂。

■硬化油
・常温で液体の脂肪油に,触媒を用いて水素を作用させると,不飽和脂肪酸に水素が付加して飽和脂肪酸になり,固体に変化する。これを「硬化油」という。

■油脂の消化
・油脂は水に溶けないが,膵液に含まれる酵素「リパーゼ」によって加水分解され,グリセリンと高級脂肪酸になる。
☆油脂の消化酵素はリパーゼ。

■けん化
・油脂に水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱すると,けん化されてグリセリンとセッケンに変化する。

■油脂の採取
□圧搾法
・ナタネの実を絞ってナタネ油を取り出す方法を「圧搾法」という。

□抽出法
ヘキサンなどの有機溶媒を用いてナタネ,トウモロコシ,大豆などから油脂を溶かし出す方法を「抽出法」という。
☆抽出法の方が効率良く油脂を採取できる。

食品の保存と添加物

■発酵と腐敗
・細菌やカビなどの微生物が食品を分解してエネルギーを得たときに,その分解産物がヒトにとって有用な場合を「発酵],有害な場合を「腐敗]という。

■酵母
・酵母はグルコースを分解してエタノールを生成する。

■酵母によって製造される発酵食品
・ワインやビールなどの酒類,パン,みりん,味噌,醤油など。

■細菌
・乳酸菌によってグルコースは乳酸に変化する。
・酢酸菌によってエタノールは酢酸に変化する。

■細菌によって製造される発酵食品
・乳酸菌ではチーズ,ヨーグルト,醤油があり,納豆菌では納豆がある。

■カビ
・カビ(コウジカビ)による発酵食品は鰹節,醤油,味噌など。

■食品添加物
・食品は変質しやすいため,色,昧,香りを良くしたり,保存を容易にするために,様々な「食品添加物」が加えられている。

■調味料
・スクロース(砂糖の主成分),塩化ナトリウム(食塩),酢酸(酢),醤油,味噌などの他に,うまみ調味料が用いられている。
・グルタミン酸-ナトリウムはコンブだし,イノシン酸ナトリウムはカツオだし,また,グアニル酸ナトリウムはしいたけのうまみ成分)。

■着色料
・食品の色は酸素や光によって失われやすいため,着色料(黄色4号など)が用いられている。

■保存料
・腐敗細菌の増殖を防止する物質を「保存料]という。ソルビン酸が代表的。

■酸化防止剤
・アスコルビン酸(ビタミンC)は還元性を持つため,「酸化防止剤」として用いられている。
☆保存料はソルビン酸,酸化防止剤はアスコルビン酸。