材料の化学

プラスチック

■プラスチック(合成樹脂)
・合成高分子化合物のうち,成形部品(容器やパイプなど)として用いられるものを「合成樹脂」または「プラスチック」という。

■高密度プラスチック低密度プラスチック
・プラスチックには結晶部分を多く持つ「高密度プラスチック]と無定型部分を多く持つ「低密度プラスチック」がある。

■高密度・低密度プラスチックの性質
・高密度プラスチックは硬くて機械的強度が大きく,透明度が低い。低密度プラスチックはその逆。

■熱可塑性樹脂
・熱を加えると軟らかくなる性質を持つ樹脂を熱可塑性樹脂という。
□例;ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン,ポリエチレンテレフタラート,ポリメタクリル酸メチル。
☆分子が直線状なので熱を加えると熱運動が激しくなって相対的に分子間力が弱まるので,軟らかくなる。
熱可塑性樹脂は分子が直線状!

■熱硬化性樹脂
・熱を加えると硬くなる性質を持つ樹脂を熱硬化性樹脂という。
□例;フェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂。
☆分子が網目状構造なので,熱を加えると重合が進行して,硬くなる。
熱硬化性樹脂は分子が網目状!

■フェノール樹脂
・フェノールとホルムアルデヒドの縮合重合により生成。

■尿素樹脂
・尿素とホルムアルデヒドの縮合重合により生成。

■メラミン樹脂
・メラミンとホルムアルデヒドの縮合重合により生成。

『機能性高分子化合物』

■機能性高分子
・陽イオンを別の陽イオンに交換したり,微生物によって自然に分解されやすい,といった特殊な機能を待った高分子化合物を「機能性高分子化合物」という。

■陽イオン交換樹脂
・陽イオンを別の陽イオンに交換するはたらきを持つ樹脂を「陽イオン交換樹脂」という。
・陽イオン交換樹脂は,スルホ基をもつ。
・陽イオン交換樹脂はスルホ基を持っているから,強酸性を示す。すなわち,水素イオンを放出しやすい性質を持つ。
・ナトリウムイオンを加えると,水素イオンを放出して代わりにナトリウムイオンが入っていくので,ナトリウムイオンを水素イオンに交換する。
☆陽イオン交換樹脂をカラムに入れて上から塩化ナトリウム水溶液を加えると下から塩酸が出てくる。

■陽イオン交換膜
・陽イオン交換樹脂を膜状にしたものを陽イオン交換膜という。
・スルホ基は通常,ナトリウムイオン型になっている。
・電気分解でよく用いられるが,「陽イオン(通常はナトリウムイオン)のみを通す」性質を持つ。
・電解槽の中央を陽イオン交換膜で仕切り,陽極室に濃い塩化ナトリウム水溶液を,陰極室に薄い水酸化ナトリウム水溶液を入れて電気分解すると,陽極室では塩化物イオンが減少し,陰極室では水酸化物イオンが増加する。このままでは陽極室はプラスに,陰極室はマイナスに帯電してしまっているので,ナトリウムイオンが陽極室から陰極室に移動し,電荷の偏りはなくなる。
☆陽イオン交換膜は,陽イオンのみを通過させる膜。

■陰イオン交換樹脂
・陰イオンを交換するはたらきを持つ樹脂を「陰イオン交換樹脂」という。
・アンモニウム塩のような構造を持っており,水酸化物イオンを放出しやすい性質を待っている。
・塩化物イオンを加えると水酸化物イオンが放出され,塩化物イオンが樹脂内に入るので,塩化物イオンが水酸化物イオンに交換される。
☆陰イオン交換樹脂は,アンモニウム塩の形を持つ。

■海水と純水
・陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を組み合わせると,海水から純水を製造することができる。

■吸水性高分子化合物
・ポリアクリル酸ナトリウムは吸水性が大きいので,紙おむつなどに用いられている。
☆理由;カルボキシル基がイオン化しているため,水が入るとナトリウムイオンが溶け込み,浸透圧が高くなる。よって,さらに水を吸収する。

■生分解性高分子化合物
@ポリアミド
・酒石酸ジメチルは,酒石酸のメチルエステル。酒石酸ジメチルとヘキサメチレンジアミンを縮合重合させると,ポリアミドが生成する。
・このポリアミドはヒドロキシ基を持つため,ここから微生物が分解することができる。
Aポリエステル
・α-ヒドロキシ酸は,同じ炭素にカルボキシル基とヒドロキシ基が結合した化合物。Rが水素の場合にはグリコール酸,Rがメチル基の場合には乳酸となる。これらが縮合重合することにより生分解性を持つポリエステル(ポリグリコール酸,ポリ乳酸)が生成する。

ゴム

■ゴムの原料
・「ブタジエン(1,3-ブタジエン)」,クロロプレン,イソプレンなど。

■天然ゴムの構造
・ゴムの木の樹液から得られる天然ゴムはポリイソプレン,つまりイソプレンの付加重合体。

■加硫
・天然ゴムに5〜8%の硫黄を加えて加熱すると,二重結合が単結合となり,硫黄原子による「架橋構造」がゴムの分子間に形成される。
・ゴムの弾力性と強度が増加し,実用に耐えられるようになる。

■合成ゴム
@ブタジエンゴム
・ブタジエンを付加重合させて合成したゴムをブタジエンゴムという。繰り返し単位は,シス型,トランス型,一方のみが反応した形がある。
Aクロロプレンゴム
・クロロプレンを付加重合させて合成したゴムをクロロプレンゴムという。
Bスチレン-ブタジエンゴム(SBR)
・スチレンとブタジエンを共重合させて合成したゴムをスチレン-ブタジエンゴム(SBRまたはブナS)という。
☆2種類以上のモノマーを付加重合させることを共重合という。
Bアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)
・アクリロニトリルとブタジエンを共垂合させるとアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が生成する。
・耐油性のホースやゴムパッキングなどに用いられる。
Cフッ素ゴム
・テトラフロオロエチレンとプロピレンを共重合させるとフッ素ゴムが生成する。
・耐熱性や耐薬品性に優れている。
Dシリコーンゴム
・ケイ素と酸素が交互につながったポリシロキサンからなる合成ゴム。
・耐熱性,耐寒性,耐薬品性,電気的絶縁性に優れている。

プラステックと環境

■ダイオキシン
・塩素を含む高分子化合物(特にポリ塩化ビニル)を低温で燃焼させると猛毒の「ダイオキシン」が発生する。
・ダイオキシンには塩素原子の数や位置によって様々な種類があるが,一般にダイオキシンというと,毒性の最も強い2,3,7,8-四塩化ダイオキシンのことをいう。

■環境ホルモン
・ダイオキシン以外にも,プラスチックから微量でも生体に様々な影響を及ぼす含有物が出る。このようなた物質を「内分泌かく乱作用(環境ホルモン)」という。
☆プラスチックの悪影響はダイオキシンと環境ホルモン。

■プラスチックのリサイクル法
@マテリアルリサイクル
・回収されたプラスチックを破砕,洗浄後,再び成形して再利用する方法。
Aケミカルリサイクル
・プラスチックを熱,触媒などを用いて化学的に分解し,他の製品の原料などに用いる方法。
Bサーマルリサイクル
・プラスチックを完全燃焼させて,放出される熱エネルギーを利用する方法。

金属

■鉄
・資源が豊富で安価で,機械強度が強いため,古くから道具として使われてきた。
・現在でも最も生産量の多い金属。
・炭素の含有量や熱処理によって,硬さや強さを調節することができる。
・欠点は,さびやすい。

■銅
・特有の赤色をした金属で,電気伝導率が大きく,軟らかくて加工しやすい。
・送電線や電化製品,合金の成分して使用。
・青銅器や古銭,奈良の大仏など,利用の歴史も古い。

■アルミニウム
・軽くて軟らかく,加工しやすい。
・鉄についで生産量が多い。
・一般に使用されるようになったのは,20世紀に入ってからである。空気中の酸素と強く結合して,表面に酸化アルミニウムの被膜をつくる。この被膜が内部を保護するため,さびにくい。
・表面に人工的に酸化被膜をつくったものをアルマイトという。

■金属の腐食
・金属が化学反応によって変質し,劣化する現象を腐食という。

■合金
・金属に別の金属を混合して、元の金属とは異なる性質を持たせたものを「合金」という。

■銅の合金
@黄銅;銅に亜鉛を10%〜40%を混合した合金。真鍮(しんちゅう)ともいう。
・性質;丈夫で加工しやすい。
・用途;装飾品や金管楽器などに用いられている。
A青銅;銅にスズを混合した合金。青銅(ブロンズ)ともいう。
・用途;銅像,美術品,建築金物などに用いられている。
B白銅;銅にニッケルを20%程度混合したものを「白銅」という。
・用途;貨幣など。
☆ポイント
・銅の合金は、亜鉛で黄銅、ニッケルで白銅、スズで青銅。

■鉛の合金
・スズと鉛の合金を「はんだ」という。
・性質;融点が低い。
・用途;電子回路での接続に用いられる。
☆ポイント
・銅の合金は低融点。

■鉄の合金
・鉄にクロム(8%以上)とニッケルを少量混合した合金を「ステンレス鋼]という。
・性質;クロム酸化物が被膜となり表面を保護するため,さびにくい。
☆ステンレスは鉄とクロムとニッケル。

■アルミニウムの合金
・アルミニウムに少量の銅などを混合した合金を「ジュラルミン」という。
・性質;アルミニウムは密度が小さい。
・用途;航空機の機体など。
☆ジュラルミンはアルミニウムが主成分。

■チタン合金
・チタンは,アルミニウムよりも酸素との結合が強くて精錬しにくく,大量生産が困難であった。
・比較的軽く,酸化被膜により耐食性に優れている。
・チタンにアルミニウム,鉄,クロムなどを添加し,強度などの機械的性質を向上させた多種のチタン合金が実用化されている。

■特殊な合金
@二クロム;ニッケルとクロムの合金を「ニクロム」という。
・電気抵抗が大きく,電熱線に用いられる。
A形状記憶合金;一度形を記憶すると,変形させても加熱すると元の形に戻る性質を「形状記憶」といい,こういった性質を持つ合金を「形状記憶合金」という。
☆例;ニッケルとチタンを1:1で混合した合金など。
B水素吸蔵合金;加圧や冷却によって金属原子の隙間に水素原子を吸着させる性質を待った合金を「水素吸蔵合金」という。
☆例; Ti−Fe,Ti−Mn,Mg− Niなどの合金が用いられている。水素は燃料電池などに用いられる,ボンベに保存すると爆発の危険があるため,水素吸蔵合金を用いると,安全に貯蔵できる。

■めっき
・金属やプラスチックの表面に薄い金属の被膜を付着させることを「めっき」という。
・鉄に亜鉛をめっき;「トタン]という。
・鉄にスズをめっき;「ブリキ」という。
・鉄に金をめっき;食器や装飾品
・鉄にクロムをめっき;水道の栓など。

■無電解めっき
・外部電源による電気分解を使わずにめっきする方法を「無電解めっき]という。
・金属イオンと還元剤を用いる。銅,ニッケル,コバルト,金,白金などで実用化されてる。

■電気めっき
・外部電源を用いて陰極板上に金属を析出させてめっきする方法を「電気めっき」という。
・金,銀,銅,ニッケル,クロムなど,多数の金属で利用されている。

セラミック

■セラミック
・かつては,粘土を焼いて作った土器などを「セラミック」といったが、現在では非金属元素の無機質固体を指す。

■陶磁器
□土器
・粘土を水でこねて乾燥させた後,800℃程度の温度で加熱すると硬くなり,土器ができる。
・性質;多孔質で吸水性が大きく,機械的強度は弱く,叩くと濁音がする。
・用途;れんがや瓦,植木鉢など。

□陶器
・白色の粘土(カオリンが主成分が代表的)に長石を加えて水を混ぜてこね,乾燥させた後,約700℃で「素焼き」をする。その後,釉薬((ゆうやく)うわぐすりともいう)をかけて,約1200℃で「本焼き」する。そして,ゆっくり冷やすと「陶器」ができます。
・性質;多孔質で吸水性が多少あり,機械的強度は中程度で,叩くと濁音がする。
・用途;食器,タイルなど。

□磁器
・磁器の作り方は陶器と同じ。本焼きの温度が高く,一般に1300℃以上。
・性質;磁器は硬いガラス質で吸水性はない。機械的強度は強く,叩くと澄んだ金属音がする。
・用途;高級食器や碍子(がいし)など。
☆強度 磁器>陶器>土器

■セメント
□ポルトランドセメント
・セメントで最も一般的なものは「ポルトランドセメント」。
・石灰岩とケイ酸質粘土,酸化鉄などを粉砕して混合し,1500℃程度に加熱して焼結させる(主成分はケイ酸カルシウムとアルミン酸カルシウム)。これに少量のセッコウを加えて微粉砕させると「ポルトランドセメント]ができる。

■コンクリートとモルタル
□コンクリート
・セメントに砂と砂利を混ぜたものを「コンクリート」という。
・用途;水を加えると固まり,建築材料として広く用いられてる。
・性質;コンクリートは圧縮には強いが,引っ張りには弱い。
☆中に鉄筋や鉄骨を入れて「鉄筋コンクリート」や「鉄骨コンクリート」にすると,引っ張りにも強くなる。

□モルタル
・セメントと砂を混ぜたものを「モルタル」という。
・用途;水を加えると固まり,建築材料として広く用いられてる。

■ガラス
・ガラスは「アモルファス」である。
・粒子が規則正しく並んだ固体を結晶質というが,不純物を含んでいたりして不規則に並んだ固体を「アモル
ファス(非結晶)」という。ガラスはすべてアモルファスなので,決まった融点は存在しない。ガラスはある温度幅で軟化し,それを「軟化点」という。

□石英と石英ガラス
・石英は化学式SiO2で,「結晶質」。
・石英ガラスも化学式はSiO2だが,「アモルファス]。
☆石英はケイ素原子と酸素原子が交互に結合しており,すべて規則正しく配列しているが、石英ガラスもケイ素原子と酸素原子が交互に結合しているが,形が歪んでいる。よって,石英ガラスは「アモルファス」。石英ガラスの軟化点は1670℃。

□ソーダ石灰ガラス
・ケイ砂に炭酸ナトリウムと石灰石を混合して製造。
☆「ソーダ石灰ガラス」は「ソーダガラス」ともいい,通常の板ガラスなどに用いられる。
我々の生活で「ガラス]といえば,ソーダ石灰ガラスのこと。軟化点は650〜730℃。

□ホウケイ酸ガラス
・ケイ砂にホウ砂を混合して製造。
☆「ホウケイ酸ガラス」は軟化点が830℃と高く,温度変化による膨張率が小さい(ソーダ石灰ガラスの約3分の1)ため,耐熱ガラスとして用いられる。

□鉛ガラス
・ケイ砂に炭酸カリウム,酸化鉛(U)を混合して製造。
☆「鉛ガラス」は「クリスタルガラス]ともいい,屈折率が大きいため,レンズなどの光学機器に用いられる。
また,鉛を含むので放射線を遮蔽するため,レントゲン撮影室の窓ガラスにも用いられる。軟化点は580〜630℃。

■ファインセラミック
□電子材料
・集積回路(IC)の基盤には,アルミナや炭化ケイ素に少量の酸化ベリリウムを加えた材料が用いられている。
・性質;絶縁性が良く,熱を良く通す(熱が放散されやすい)。

□耐熱強度材
・窒化ケイ素や炭化ケイ素は熱に強く,ガスタービンやエンジンの材料などに用いられている。

□バイオセラミックス
・アルミナを主成分とするセラミックスが人工関節,人工骨などに用いられている。
・性質;人体に無害で耐久性の高い材料。

■光ファイバー
・光ファイバーは石英ガラスでできた繊維。光が全反射をすることによって,外部に漏れずに伝わる。
・用途;通信ケーブルや胃腸の内視鏡など。

■複合材料
□繊維補強プラスチック(FRP)
・ガラス繊維や炭素繊維で織った布にプラスチックを塗り固めたものを「繊維補強プラスチック(Fiber Reinforced Plastic)」という。
・性質;通常のプラスチックの100倍もの強度を持つ。
・用途;テニスラケットやスキー板など。

□繊維強化金属(FRM)
・セラミック繊維や金属繊維などにアルミニウム,マグネシウム,チタンなどの金属を組み合わせた材料を「繊維強化金属(Fiber Reinforced Metal」という。
・用途;航空機部品,自動車のエンジンなど。

□超伝導材料
・物質の電気抵抗がある温度(転移温度という)以下でゼロになる現象を「超伝導」という。金属系ではMgB2が39Kで起こすが,酸化物では133Kで起こすものがある。
・用途;リニアモーターカー。(ニオブ-チタン合金(転移温度9K)を液体ヘリウム(沸点4K)で冷却した超伝導磁石)

□半導体
・電気をよく通す物質を「導体」。
・電気を通さない物質を「絶縁体」
・中問の性質を持つ物質を「半導体」。
・半導体には,高純度のケイ素やゲルマニウムが用いられている。
・ダイオードは一方のみスムーズに電流を流す。※逆方向にはほとんど電流を流さない。

■ダイオート
・ダイオートは「N型半導体」と「P型半導体」の組み合わせでできている。
□「N型半導体」
・リン,ヒ素,アンチモンなど「価電子が5個」の15族元素の原子を少量加えられ、電子が過剰になっている。
□「P型半導体」
・ホウ素,インジウムなど「価電子が3個」の13族元素の原子を少量加えられ,電子が不足している。